捻挫した足に振動を与えないよう、夕凪はゆっくり歩いてくれる。



この状況を面白がる野次や、指笛が聞こえる。



恥ずかしくて、夕凪の裸の肩に顔を伏せた。



夕凪の匂いがする…

香水ではなく、夕凪自身の香り。



サイダーみたいに爽やかだと思うのは、

二人で良く食べた、海色ドロップを思い出すせいかも知れない。



いつも隣にいた香り…

馴染みのある香りに、今はドキドキと胸が高鳴る。



夕凪と触れ合えたのは、久しぶりで、

あの雨の日から、こんなに近づくことは出来なかった。



嬉しくて…

でも、淋しくて…


こうして抱き上げてくれる今も、夕凪の心が離れているのだと思うと、

胸が潰されそうに苦しくなる。