コートの前でキョロキョロしていると、
佐伯さんにこう言われた。
「貝原君探しているの?
いいなー、目立つ二人にモテて」
他の女子にも言われる。
「朝比奈さん可愛いから、仕方ないじゃん。
努力なしで可愛いって、ズルイよね。
上條と貝原、どっち取るの?
いらない方、ちょうだい?」
冗談ぽく笑って言う二人。
その目が… 怖かった。
気のせいだと、思おうとする。
仲間に入れてくれて喜んだ気持ちを、崩したくない。
クラスメイトの佐伯さん達を、悪く思いたくない。
試合開始の時間になる。
ミニコートの中央に整列する。
並んで初めて気付くことは、審判の一人が宮田さんだということ。
宮田さんは上條君のことが好きな、サッカー部マネージャー。
水飲み場で水を掛けられてから何度か廊下をすれ違ったけど、何も言われない。
ただ…
こうして睨まれるだけ。


