声をかけたはいいが、何と言っていいのか分からなくなる。
上條君が足を止め、振り返った。
私を見て、苦笑いする。
「負けちゃった…
自分から勝負を持ち掛けたのに…
格好悪いよな…」
私は首を横に振る。
必死だったのは、夕凪だけじゃない。
上條君も真剣に、勝とうとしていたのは分かっている。
格好悪くなんかない。
私のために必死になる姿は…
胸が痛くて、苦しいけど…
上條君が背を向けた。
私を見ずに、沈んだ声で言った。
「負けたから、デートは無しでいいよ。
貝原って、結構スゴイな…
悔しい…」
「上條君、あのね、夕凪は小さな頃から海で鍛えているから…
だから…えっと…
上條君も速かったよ。本当に凄いと思った」
悔しがる彼を、慰めたつもりだった。
でもそれは、的外れだった。


