いつも大人しい加奈まで、興奮していた。
「潮音!こっちこっち!」
加奈に手を引かれ、ゴール真ん前に人を掻き分け潜り込む。
上條君と夕凪は、既にトラックを走っていた。
半周して、ゴールまでは、あと100メートル程。
変わらず上條君が体一つ分リードして、
夕凪は離されないよう、ピッタリ後ろを追っていた。
夕凪の必死さが伝わって来た。
この勝負に、どうしても勝ちたい…
そう願う、夕凪の気持ちが…
そこまで勝ちたいと思うのはなぜ…?
スタート前の、二人の会話を思い出していた。
『勝負する気になったのか?
潮音ちゃんのこと、やっぱ気にしてんだろ?』
『潮音は関係ねぇ。
気が変わっただけ。
お前にムカついたから、走る。
そんだけ』
“そんだけ”と言った夕凪。
本当にそれだけでこんなに必死なのかと、疑いたくなる。
期待したら、後で傷付くだけなのに、
もしかすると本心では、私を取られるのが嫌だと…
つい都合のいい方に、夕凪の心を読もうとしてしまう。


