涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


先頭集団が近付いて来る。


私の目の前を通過した時、
上條君が仕掛けた。



先輩達の間を縫うように先頭に飛び出て、スピードを上げる。



それに付いて行くのは、夕凪だけ。


他の走者達は息が上がり、追いたくても追えずにいる。



「1年に負けんなよー!」


「上條ー、ぶっちぎれーっ!」



カーブを曲がり見えなくなるまで、

みな口々に応援していた。




1000メートル走は、スピード配分が大切。


最初から全力で飛ばせば、後半のスピードはガタ落ちし、

後続に抜かされてしまう。


それは私にも分かる、長距離走の常識。



それなのに…


2周目の最後のカーブを曲がり、戻って来た先頭は、

上條君と夕凪の二人だった。


上條君が夕凪の、体一つ分前を走っている。



後続はかなり離されたようで、姿が見えない。


二人共、全力だと思うスピードで飛ばしていた。



苦しそうな息の中、上條君は後ろの夕凪を気にしている。



夕凪もキツそうだ。

綺麗な顔を苦しげに歪め、
必死に上條君に食らいつく。