涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜

 


スタートはもうすぐ。


合図を待ち、列を作る走者達。



1年生は不利な後方スタートと決められていて、

上條君は最後尾の列の、右端にいた。



夕凪がいないので、気合いは入らないみたい。


見ている私に笑いかけ、のんきに手を振っていた。




スタート1分前になる。


応援の人垣が、ザワザワしだした。



「来た?うっそ!?」


「走るんだ!」



そんな声が、後ろから聞こえて振り返った。



金色の髪が、人波の間に見えた。


観客を掻き分け、前に出たのは…


夕凪。



クラスで揃えたTシャツではなく、黒い自前のTシャツを着て、

体育ジャージにスニーカーを履いている。




「夕凪…」



呟く私の横を通り、
夕凪は上條君の隣に立った。



上條君が不敵な笑みを向ける。



「勝負する気になったのか?
潮音ちゃんのこと、やっぱ気にしてんだろ?」



夕凪は上條君を見ていない。


まっすぐ前を見据えたまま、宙に向けて答える。



「潮音は関係ねぇ。
気が変わっただけ。

お前にムカついたから、走る。
そんだけ」