憧れの四ノ宮くんと図書室で2人。
考えてみたら、夢のようなシチュエーションだ。
「僕さ、こう見えても文学少年なんだよ。本読んでると、現実逃避できるから」
「…ふふっ。何それ」
私は小さく笑った。
そこですかさず四ノ宮くんが、
「笑った顔、やっぱいいね……」
…なんて、見つめながら呟いた。
「な、何…急に」
「河瀬さん、笑った方が可愛いよ?」
「……!」
驚く私をよそに彼はどんどん言葉を続けた。
「…もちろん、笑ってなくても…充分可愛いけどね」
「な、何…それ…」
いくら憧れの相手とはいえ、その言葉は嫌味にしか聞こえなかった。
だって…四ノ宮くんは、大きなクリクリっとした目。しかも二重。
ぷっくりした唇。綺麗に整った、可愛い系の顔立ち。
おまけに綺麗なサラッとした黒い髪の毛。
容姿端麗。
この言葉が彼にはお似合いだ。
しかも成績は常に学年トップ。
だけど私は……可愛くなんかない。
目は奥二重だし、いかにも無愛想そうな顔……。
愛らしい容姿の四ノ宮くんとは、まるで月とスッポン。

