「今年から、会社のイメージキャラクターが艶さんになったんだって?」
「……は?」
俺はそれを聞いて硬直していた。
「戸崎さん!艶さんですよ!!
どれだけCMオファーしても受けない艶さんがイメージキャラクターですよ?
しかも破格の値段で!」
そうなのだ。
優弥は音楽活動以外には全く興味がなくて。
オファーは大量にきているのに、CMなどに出たこともない。
そんな優弥がこんな家のイメージキャラクターを務めることになるなんて。
俺も初耳で驚いていた。
「はは……売り上げ落ちますね」
苦笑してそう言うと、
「ははじゃないです!一大事です!!」
「すげー!」
なんて一斉攻撃にあった。
優弥は何も言わなかったけど、俺を助けてくれたのかなと思った。
騒ぎを起こして、会社に散々迷惑をかけて。
本当は会社に合わす顔もない。
だから優弥は、俺の名誉回復のためにもイメージキャラクターを受けてくれたのだろう。
言うことはキツイけど、いつもこうやって助けてくれる優弥。
俺がこうして生活出来ているのも、優弥のおかげだ。
……なんてことは、本人には伝えないけど。
そんなことを話していると、
「戸崎」
思いがけず前田課長に呼ばれた。
課長の隣には見知らぬ男性がいて。
何だか嫌な予感がした。
俺は男性に一礼して、促されるまま会議室に入った。