私は小さくうなずいた。



「そろそろ帰る?」

「うん・・・」



レストランを出ると、雨が降っていた。

今日、雨が降るなんて言っていなかったのに・・・。

傘、持ってきていないなぁ・・・。



「郁美、傘ある?」

「ないの・・・」



「ほら」と榊くんは私の頭上に傘を持ってきた。



「これ、使って?」

「・・・良いの?」

「濡れて風邪引かれるの困るから」



ニコッと彼は微笑む。

か・・・神様みたいな人だなぁ・・・。




「じゃ、またね」

「あ・・・!
か、傘ありがとう!
月曜日返すからねー!!」



まだ雨は小降りだ。

風邪引くことはないだろう。




私は雨の中走り出す榊くんが見えなくなってから、西場駅へと歩き出した。

榊くんから借りた青い傘を、握りしめて。