「郁美、全部聞こえていたよ」

「へっ!?」

「俺に話しかけてみようかな、とか」

「こ、声に出していたの!?」

「うん」



は・・・恥ずかしい!



「郁美。
いつまでも亡くなったお姉さんのこと、追い求めていたら駄目だと思う」

「えっ・・・」

「お姉さんのことを忘れてあげてもいけない。
だって郁美は、お姉さんのこと大好きなんでしょ」

「うん・・・」

「でも、いつまでもお姉さんがいればって思っちゃ駄目だよ。
郁美はこれから1人で生きるんだから。
お姉さんを追い求めていたら、郁美は何も出来ない人になる」

「・・・榊、くん」

「追い求めてもお姉さんがいないこと、郁美はもう受け止めているんでしょ?」




・・・確かに私は。

お姉ちゃんが死んだことを、受け止めてはいる。

さすがに駄目だと思ったから。

でも・・・。

私はお姉ちゃんから卒業できていない。

いつもいつも、お姉ちゃんがいればって思っている。




「わ・・・私・・・・」

「ゆっくりで良いんだよ。
少しずつお姉さんから卒業して、自立していけば。
人間、いきなり慣れるのは不可能だから」

「・・・わかった・・・・」