俺を引き留めた奈々子は、気まずそうな顔で、切り出した。



「瑛士(えいじ)、元気だよ?」

「・・・そう」

「たまには会ってあげて?
瑛士、会いたがっているから・・・」

「俺、会うつもりないから・・・」




俺は言い放つと、家へと続く道を歩きだした。





夜空は、黒くかすんでいた。




「・・・ハァ」




思わず出た溜息。

奈々子に会って、瑛士の話聞いたからかな?




瑛士の話を聞くと思いだす。

俺と両親しか知らない、俺の秘密。




郁美・・・。

俺にはね・・・。




言えるわけない。

ハァ・・・俺って本当にヘタレ。

困った性格、我ながらしているわ。




郁美、いつか聞いてくれる?





俺の、秘密を。