‡〜浄化の時〜‡

ゆっくりと青龍によって浄化された気は、暗雲さえも晴らしていく。
屋敷中に満ちていた気は、清浄すぎる程だ。
地下からの階段を上り、外へ出ると、そこには多くの一族の人間が座り込んでいた。

「どう言うことだ…?」

秦は、少しふらつく私を支えながら、辺りを見回す。

「今まで、龍牙刀の影響で負の気を取り込み過ぎていたの。
青龍が気を浄化した事のよって、本来の気を取り戻した」
「自分達がどんな行いをしてきたのか、思い返しておるんじゃ。
今までが正常な思考ではなかったからな」
「一族は、血で繋がっていたのだ。
だから、私や秦のように血の薄い者は影響を受けずにいられたのだろう」
「そう。
当主に取り憑いていた龍牙刀の波調は、血を通して一族自体に取り憑いていたの」
「なら、龍牙刀の影響が失われた今、正常に戻ったと?」
「ええ。
一族の者達は気づいていなかったの。
自身の意志ではなく、龍牙刀に操られていたことを…」

気づく事などできなかったのだ。
当主がおかしくなっても、おかしいとは思わなかった。
麻痺していたのだ。
それは、長い年月、龍牙刀の犠牲になった人達の怨念。
呪いとも言える力。
調導の力は、その怨念を抑えることができた。
調律していた。
けれど、調導の力が弱まったことで、抑えることができなくなった。
そして、血を血で洗う悲劇を呼んでしまったのだ。

「ありがとう、秦。
もう一人で平気…」

そっと離れて数歩前にでる。


パンパンッ。


まだ頭の整理のつかない人々。
現実に呼び寄せように手を鳴らす。

「私は、夜月美南都。
父の名は藤武。
龍牙刀の力は浄化されました。
一族に起こっていた事。
順を追ってお話します」

こちらに目を向ける人々に、龍牙刀の事。
亡くなってしまった人達の事。
そして、一族の担う役目の事。
全てを話した。