稲瀬の腕が、自分腕に当たる…

これはかなりの近距離…





「そういえば、今日の委員会決めで園芸委員すごい人気だったな~」




永井が思い出したように言う。




「そうだね。カップルばっかり…」

「ただカップルが二人でやりたいだけだろ?他の委員会は、男女一人ずつなんてないし」

「…でもあの委員結構大変だし、甘くみてると痛い目に遇うと思うけど…な?」




稲瀬が私に聞く。




「うん…それに校長が学校の植木とか花壇にうるさいらしいから、担任の目も厳しいしね」

「ああ、前に言ってたよね!なんかそういう学校珍しくない?」

「確かに。 ま、植物を大切にするのはいいことだと思うけど…」


香穂と永井が顔を見合わせた。




一学期私と稲瀬が園芸委員だったときも、担任に細かく注意されたっけな…

夏前にひまわりの種まいた時だって、すごく大変だった…


新しく園芸委員になったあのカップル…

これから大変なことたくさんあると思う…


朝と放課後は水やりやらなきゃいけないし、それに…

これから本格的に秋になるんだから、また花壇の植え替えの時期なんじゃないのかな?



秋だから…まあ定番のコスモスとか?


あと、校庭の木の枯れ葉の掃除とかやらされそう!



って…

私はもう園芸委員じゃないんだよね。





私は香穂と図書委員になったんだった…

稲瀬はというと…永井と一緒に生活委員になった。


生活委員は男女各2人ずつで、あとの女子はクラスで目立つかわいい二人だ。

稲瀬と永井と同じ委員になれたからか、女子2人は生活委員に決まってすごく嬉しそうだった。



私は香穂と2人で図書委員…

それはすごく嬉しいけど…


稲瀬との接点がひとつなくなると、なんとなく寂しく思ってしまう…


一緒に住んでるんだから、接点なんて他にもあるんだけど…

でも私にとっては、園芸委員というのはすごく特別なものだった。



あの委員会が、稲瀬に近づけた最初のキッカケだったから…

一緒の委員会にならなかったら、ここまで近くにはいられなかったかもしれない…


親同士が親しいからって、きっと私と稲瀬に面識がないなら、いくらあのぶっ飛んだ母親でも一緒に暮らせとまでは言わないと思う。