空音を奏でる宙

実は僕は包丁を持つのが初めてなのだ。
今までは指を守るために極力危険なことはしなかったのである。
いや、させてもらえなかったといったほうが正しいだろう。

慣れない手つきでゆっくりと野菜を切る。
人参を切るのが一番苦労した。
人参って案外硬いんだなと思いつつ切った野菜を全てフライパンへと入れる。

……もうお分かりだと思うが現在僕が作っているのは野菜炒めだ。
初日はこれくらいのものがいいだろう。
そう思ってこの料理を選んだのだ。

それから元栓の存在を忘れていて火をつけるのに三十分格闘していたことは僕の黒歴史に刻まれることとなった。
知っているのは璃織だけだ。

そうした数々の苦難を乗り越えた末、無事、夕食は完成した。