空音を奏でる宙

「本題に移るけど、この子の面倒を見てやってくれないかしら?」
大家は真剣な目をしている。
冗談ではない、その一言になんの迷いもない、そんな言い方だった。
しかし、僕は介護や人の精神状態に関する知識を何も持っていない一人の学生である。
中途半端に踏み込んではいけない。
そんなことだけが分かる僕自身が情けないような気がした。

「無理ですよ……きっと僕なんかよりもこの子のためになる人はいくらでもいると思います。」
情けないがそう言うしかなかった。
それが一つの事実であるからだ。

しかし、大家は首を縦に振ろうとはしない。
むしろより決意を固めたような目をしている。

「私はね、この子を変えられるのはあなたしかいないって思っているのよ。」