空音を奏でる宙

大家はこれまでで最も重々しい顔をし、唇を噛み締めるようにして言った。


「──心が壊れているのよ。」


言ったことの意味が理解できなかった。
心が壊れる。
そんな現象が本当にあるのだろうかとただただ疑うしかなかった。
しかし、その疑いは実際に璃織を見ることで全て事実となる。
璃織は僕が最初見つけて大家を呼び出し、これまでの会話をしている間たった一つ、わずかな反応でさえも見せていない。
何も見ていない目で何を見ようとしているわけでもなく、同じ方向を見据えている。
指一本でさえも動かさない。
まさにそれは意識のある植物状態というべきものだった。