レッドは気がのらないながらも、仕事帰りを意識してスーツで展覧会へと出向いた。


「はぁ・・・なんか趣味の悪いハデさのある器だな。
カップもどうも芸術的センスゼロといってもいい品だ。」


「そうね、もうちょっと期待してたんだけど、噂は本当かもね。
こっちはついででパーティー目的だったのかも・・・。」



「そう思うな、俺も・・・ってあんた・・・誰?」


隣を見て驚いたレッドだった。

声はエリンの声だったから、ちょっとうれしい気がして隣を見ると赤毛にそばかすだらけで超ド派手ドレスの娘が笑っていた。


「私よ・・・レッド。」


「え、やっぱりエリンなのか?
ど、どうしてそんな格好を?」


「じつはね・・・ユナ皇太子から直接招待状を会社の方にもらってたの。
でも、なんか、いやらしい文面で、気持ち悪かったから、わざとこんなふうにね。」



「いやらしい文面ってどんな?
あ、差し障りなかったらだけど・・・」



「清楚な君にぜひ会いたい。
パーティーで君の手をとるのが楽しみだ。

君さえよかったら、僕が事業のバックアップをしてやってもいいよ。
そのかわり、僕の国で仕事をするんだ・・・みたいなね。」


「なんじゃ、そりゃ?
清楚な君・・・って。

もしかして正体バレバレなんじゃないのかい。
だったら変装するだけ、逆効果だろ。」



「えっ?そうなの。
これでバカみたいにふるまえば・・・って思ったのに。」


「男っていうのは、好きな女が自分のために何かサプライズしてくれるというのは、逆にそそられてしまうんだ。
意識してるなってわかるだろ。
相手は君の本当の顔を知っている・・・まずいな。」


「じゃあ、いかにもお仕事した帰りで疲れたっていうメイクしてくるわ。」


「そんな簡単に変装できるのか?」


「ええ、作るのは簡単なの。
うちのスタッフに化粧のすごく得意な人と、服飾のプロもいるのよ。」


「ドネリティって・・・すごいんだね。」


「ええ。父が生前によく言ってたんだけど、会社にとって人材こそが一番の財産だって。
いろんなことに秀でたプロが、自分から力を貸してあげようって思ってくれるような会社にしていかなきゃって。」


「へぇ・・・。すごいお父さんなんだなぁ。」



エリンは控室に準備しにいって、その間に話の種の人物が現れた。


「ほぉ・・・あれがユナ皇太子か・・・。
資料を手にいれたが、俺と同い年か。

エリンに目をつけたのはいいが、国名をかざすだけじゃレディをさらえそうにないだろ。
どうするつもりなんだ?」



「エリンティアはどこだ?
エリンティア・クォンテ・ドネルティに会う約束をしているんだよ。

このパーティーは私たちのためにあるといってもいい。
エリンティア出てきてくれ。
参加してくれないと、すぐに展覧会とパーティーはおひらきにするよ。
そうしたら、寄付もなくなってしまうよ。」