レッドたちがエリンを捜しまわっている頃、エリンは女の声で目を覚ました。



「ハンクの意識がもどったらすぐに教えてちょうだい。
すぐにそちらに向かうわ。
じゃ、また・・・」



「う。ううう。ここは?」



「目を覚ましたわね、きれいな顔をした泥棒さん。」


「泥棒って・・・私は何も?」



「あなたは2つ盗んだわ。
1つは従姉の事業。そして2つめはハンクの心よ。」


「待ってよ、ハンクって、私たち会ってまだ間もなくて・・・観覧車に乗っただけだし。」


「恋におちるのに時間はいらないわ。」



「あなたはハンクが好きなの?」


「さぁ・・・わからないわ。
でも彼の才能は魅力があるわ。
ご実家の財力も十分だし、私にふさわしいわ。」


「あなたは何なの?誰なの?」


「死ぬかもしれない人に教えるわけないでしょ。」


「死ぬかも・・・って・・・どういうこと?」



「取引しましょ。
あなたにデザインしてほしいものがあるの。

やってくれるなら、ここで飼い殺し・・・いえ、幸せもサービスしてあげるわ。
クリーブをここに呼んであげましょう。

で、あなたが何もしたくないというなら・・・」


「殺されるのね。わかったわ。やるわ。
なんとなく、あなたの正体もわかったわ。」


「そう、頭のいい人で助かるわ。
デザインしてほしいのはこれよ。」


女がエリンに差し出したのは小さな化粧品用の瓶だった。


「これは・・・お化粧品の容器ね。」


「ええ、最初はハンクにお願いしようかと思ったんだけど、専門外でしょうし、あなたに損をさせられたんだからあなたから取りかえす方がいいかと思ってね。」


「リエッタとどういうご関係の方なの?」


「ほんとに頭のいい方ね。
いいわ、すぐわかることだから教えてあげる。

私はリエッタの従妹のハルビィ・マグナリーク。
リエッタの会社のアイドルたちにも化粧品を提供してるわ。

でもあの娘は事業主としては、我がままであまいからあなたの会社のスタッフに負けた。
クリーブの攻撃にもあってなんとか倒産だけは免れたけど、あの女王様が凹んだままよ。

社長が凹んだからって社員を守るのは、経営者の役目なのはよくわかるでしょ。
だから、私がたてなおしてあげるのよ。」



「私の能力を使って?」


「うるさい、おだまり!
やられたらやりかえす、何もおかしいことじゃないわ。」


「でもあなたのやり方は間違ってるわ。
暴行や誘拐だけでも犯罪なのよ。

あなたの事業でのたてなおしなら、正面から会社にやってきて私に頼めばいいことだったのに。」


「そうね、でも私にだってマグナリーク一族のプライドがあるのよ。
自分の前に嫌なヤツを見つけたら、たたきのめさないと気がすまないっていうね。」


「わかったわ。次は殺人予定なんだものね。
じゃ、鉛筆とスケッチブックを貸してください。
瓶でも持ち手の類でもいろいろ案を出してあげるから。」