しばらくして、ラングリオの仕掛けた罠は予定通りにすすみ、リエッタは頭を抱えていた。


「そんな・・・どうして発注ミスがあったの?
誰か精査してなかったの?

ところで、部長はどこにいったの?」


「あの・・・半月前ほどに退職なさいました。」


「知らなかったわ・・・何もいわなかったのね。」


「いえ、忙しいときにうるさいって社長が・・・」


「なによ、私のせいにするつもり?
ちょっと帳簿かしてちょうだい。

あ・・・何よ、これ。
損失だらけだわ。
うちにはもっと・・・もっと財産があったはずだわ。」



「そんなのありません。
退職者が多数でて、退職金でけっこう出て行ってしまって・・・。」



「なんでそんなに退職者がいたの?
それを早く私にいわなかったの?」



「言わなかったんじゃないです。あなたがきかなかっただけじゃないですか!
私も今日を限りでやめさせていただきます。」


「そ、そんな・・・。」




ちょうどその頃、レッドのところにクリーブから電話が入っていた。


「レッドか・・・エリンは元気か?」


「ああ、記憶もほぼ全部もどったみたいだ。
それに、あんちゃんの援護射撃もあってリエッタも攻撃してこないだろう。」


「いや、僕はたいしたことはしていないよ。
不当に退職させられた人たちにうちの仕事をしないかともちかけただけだから。

それよりも、君の弟の策略が当たったんだ。
実際、僕も助かったよ。
妹からの攻撃は、嫌だったが避けるすべがなかったからね。」


「なぁ・・・あんちゃんは今もエリンのことを・・・思っているのか?」


「思っていないといえば嘘になるな。
きれいだし、ほんとにかわいくて仕方がなくなる娘だからね。

けど、君が飛び込んできたときに、記憶がないのに君の名を呼んだエリンはきっと君のことを特別に思っているんだろうね。」



「どうかな。もどってしまえば、俺は兄貴のような存在なのかもしれないし、仕事をしているときは弟との方がしっくりしっているようだけどね。」


「弟に嫉妬してるのか?
悪がきレッドも昔と同じで、ここ1番の押しが弱いんだな。」


「そんなことは!・・・いや、そうかもしれないな。
で、今日の用事はエリンの様子見だけかい?」


「いや、明日から新しい映画のロケキャラバン隊といっしょに遠出してしまうんだ。
しばらく、連絡が途絶えることになるから電話したんだ。

君たちのおかげで妹の妨害にも気にせず出かけられるようになったよ。
ありがとう。
妹のことは、俺のところの弁護士にいろいろ頼んでおいたから、もうエリンに迷惑をかけることもないだろう。」


「そうか・・・じゃ、帰ってくるまで無事でがんばってくれ。
あ、エリンにかわろうか?」


「いや・・・いいんだ。
記憶がもどって元気になったなら、それでいい。
じゃあな、帰ったらまた。」



「ああ、あんちゃんも元気で。」