クリーブはクスッと笑うとエリンの前に料理を並べていった。


「これはすごいわ。
クリーブってシェフよりすごいんじゃないの?
シェフ雇ってるのがもったいないわ。

あ、でも今はお休みでいるんだったよね。
ごめんなさい。」


「ああ、休みだから頼んでいたけど・・・君が喜ぶなら2人で作るかい?」


「やっぱりやめとく。
私は絵を描きながら、記憶を戻さなきゃいけないんだもの。

もどったらきっと帰らなきゃいけないから、クリーブとお別れになるし、シェフにはいてもらった方がいいもんね。」


「なぜ、お別れになるんだい?」


「だから・・・私はクリーブみたいにお金持ちとは縁がないし。」


「僕はメイドの息子だよ。
今でこそ、映画会社の社長なんていってるけど、そこにたどり着くまではいろんな仕事をやった。

たまたま生活に疲れたときに、自分を癒してくれたのが映画で、ボロ家みたいな劇場で古い映画を見た。
けど、その古さが逆によかったんだ。

何年も前の人々の空想が現実になったのがわかるし、ひとの頭の中ってすごいなぁってスッと僕の中に感動が入ってきて気持ちよかったんだ。」


「ふふふふ。クリーブは天職についたのがよくわかるわ。」


「あっ、ごめん。映画の話になるとつい・・・ね。」


「いいわよ、少年みたいに目がキラキラしてて、きいてる方も楽しくなるわ。
苦情や嫌な噂話じゃないんだもの。」


「そりゃ、そうだ。あははは。」



それから1週間、エリンとクリーブは邸を中心に楽しく過ごしていた。

クリーブが仕事を少し入れるようになって、エリンも庭でスケッチをする時間が増えた。


「今日も庭で描いていたのかい?
おぉ、エスニックな模様だねぇ。
今まではかわいい雰囲気だったエリンワールドが急にイメチェンしたみたいだな。」


「そうでしょう。
この方がお皿とか器には実用的だし、大きなお皿だとテーブルの真ん中に置くだけでレッドがよろこんで・・・。
えっ・・・私、今・・・レッドって・・・誰だっけ?」


「君は・・・レッドといっしょに住んでいるのか?」


「クリーブはレッドを知っているの?
レッドって誰?
どうして、レッドがよろこぶって・・・?」


「小さい頃に彼とは近所に住んでいたことがあるんだ。
今の生活は知らないけれど・・・。」