夕方にはクリーブのもとに電話がかかってきていた。


「お久しぶりです。クリーブのあんちゃん。」


「おまえ・・・レッドか?悪がきのレッドだよな。」


「ああ、あんちゃんのことテレビでは知ってたけど、俺も忙しかったから何も言えなくてごめん。」


「いいんだ。俺も最近、この前封切りになった映画の仕事の一段落がついてな、邸にもどってこれた。
だからおまえとこうやって話せてるんだ。

それにしても、おまえ・・・元気そうで何よりだ。」


「ああ、もちろん俺はいつでも元気さ。
ところでさ・・・1つ聞きたいことがあるんだ。」


「なんだ?おまえ久しぶりだからってあらたまってないか?
また兄貴から怒られたのか?」


「違うよ。兄貴も俺も弟も独立してるんだからな。
俺が電話したのは、今そこに25才の女がいないかってこと。」


「はぁ?なんだそれ・・・。」


「いないのか!エリンはそこにいないのか?
あんちゃんとこだったら安心だって思ったのは・・・あまかったのか。」



「いや、すまない。嘘だ。
おまえがあの娘にとって悪い立場だったら・・・って思ったから。
すまん。
でも、僕のところなら安心って何かあったのか?
あの娘は誰だ?」


「エリンはいるんだな。
よかった・・・ごめん、あんちゃん。

じつは・・・エリンは。」



レッドはクリーブにリエッタが企業を買収または倒産に追い込む行動に出ていることを説明し、そこにドネリティ社とガオンティル社がかかわっていること。

そして、エリンのデザインを自分で取り込むことを考えてラングリオに接触し始めたことなどを話した。


「エリンティア・クォンテ・ドネリティか。
わかった。

それとレッド・・・落ち着いてきいてほしいんだが、エリンは今記憶を失っている。」



「えっ・・・でもエリンって。」


「ああ、名前は覚えていたんだ。でも自分が何をしている人間かとかはまだだめだ。
少しずつ薬の効果が消えてくれば、思い出すだろう。

だから、すぐ仕事はできない。
それを何とかできるか?」


「何とかするよ。こっちは小さな店だし、準備期間を少しのばせばいい。
ドネリティ社の方は役員たちに考えてもらうようにする。
だから、大丈夫だ。

俺もすぐそっちへ行きたいが、エリンにかわって仕事をこなさないといけないからまだ行けないし、弟はリエッタのマークを引き付けておいてほしいから、動けないし・・・あんちゃんに頼んでもいいか?」


「ああ、新しい作品始動までは少し時間もあるし、大丈夫だ。
大変そうだががんばれよ。

おまえに会えるのを楽しみにしているからな。」


「おう。変なきっかけだけど、俺もあんちゃんに会えるのを楽しみにしてるから。
また・・・エリンのことお世話おかけしますけど、よろしくお願いします。」


「ああ、まかせろ。」