そうつぶやきながら、手を震わせるエリンだったが、いきなり目の前が暗くなってレッドの腕の中にすっぽり包まれていた。


「いいんだよ。怖い時は怖いっていえば、それだけでいいんだ。
ラングだけじゃ小間使いにはなっても力不足だよな。」



「それじゃ・・・私のお店にきてくれる?」



「ああ、だいたい社長直々の申し出なんだぞ。
職にあぶれている俺が反論できるわけないじゃないか。

ただ、今すぐ仕事っていうのは嫌だけどな・・・。」


「えっ?」



「新事業を起こすなら、まずは仕事にかこつけながら休暇だ!
リフレッシュしてからやらないと、最初が肝心って動けなくなってしまうぞ。」



「休暇ってどこか行くの?」


「ああ、デザイン考えたりするんだろ?
じつは前から連れていってやりたかった島があるんだ。

そこへ行ってアイデアを練ろう。
そして決めたことをラングのパソコンに送って動いてもらえばいい。」



「まぁ、ラングはお留守番なの。」


「いいんだよ、あいつは。
昔から出不精なんだからさ。あはははは。」



そして翌日には、飛行機でキューウィン島へ出かけた。


「ねぇ、セスナ機なんかどうしたの?」


「ああ、飛行機会社の友人がいるんだ。
営業のときも急ぎのときはときどき利用させてもらってたから、常連さんだぞ。」


「なるほどぉ。」


キューウィン島は知る人ぞ知るリゾート地という島だった。
主な産業としては、観光、農業、漁業と言ったところだが、大会社の重役たちがリフレッシュするのにやってくるらしい。



「へぇ。知らなかった・・・。」



「だろうな。君たちはふだんから働きすぎてたんだよ。
大会社の面々っていうのは、遊ぶことも仕事の一環ってことで、ここで休みをとっているんだ。」



「そうなんだ。私何にも知らなくて・・・。
だめだなぁ。社長なのにこんなこともぜんぜん。」



「エリンだって経営学や勉強はしっかりやっているんだし、素質は十分だよ。
けど・・・会社を背負うには似合わなさすぎる。」



「ごめんなさい・・・そんな私につきあわせちゃって。」


「あ、違うんだ、そういう意味じゃなくて。
年相応にもっと遊びたかったろうになぁって思ったりしてさ。

OLだったら君の年ならそこそこに貯金もできて、恋に遊びに買い物に・・・ってここで楽しめるだろう?」



「私はそんなのいらないわ。
自分だけのお店ができるだけでも、両親に感謝してるし。
あ、レッドもOLさんと遊びたいなら、私に遠慮なく行って来ていいからね。」


「おい、なぜそうなる?
ここに君を連れてきたのは俺だからな。

案内するのも俺だし、エリンを楽しませるために来たんだからな。
他の女と仲良くする予定はないぞ。」



「ありがとう、レッド。
私何も知らなくて・・・。」