エリンの表情がふと暗くなったように思ったレッドは気になったことをエリンに投げかけた。


「もし、もしさ・・・損失の原因がわからなくて、犯人もわからなかったらエリンはどうなるんだ?」


「リガオンとは結婚話は中断のままってとこだけど、この会社のお偉方の皆様はそうは思わないでしょうね。
きっと別の誰かと私を結婚させようとしてくるか、もしくは・・・べつの会社のご令嬢にでも会社のピンチを救ってもらえるようにお願いしてまわるんじゃないかしら。」


「そんなことをしても損失部分の訳が分からないと、君のとこと同じ決断を下すだろう?」


「さぁ・・・どうかしら。
その帳簿を盗んだり、証拠を持ち去っている人物と別会社の誰かが何かを企てたりしてたら・・・。」



「困るな。っていっても・・・俺はたかが1社員にしか過ぎないんだけどな。
ところでさ・・・俺、自分の生活の中で何も考えずにしゃべってるから、知らず知らず君を傷つけてると思う。

だけど、これだけは知っていてほしいんだ。
君に枠を作ってるとか、ひとりぼっちにしたいとか、君は社長だからうちの家族とは違うとか・・・たとえそんんな感じの言葉を使ったとしても、心ではそんなこと思ってない。

逆なんだ。せっかくうちに来てくれたんだ。
だから君はひとりじゃないし、そりゃ、来たときはひとりだったかもしれないけど、俺たち家族はみんなエリンと家族のつもりでいる。

俺は妹と君を分けたこともないし、みんな連れていったことのあるところは連れて行く。
悲しそうな顔してれば、心配するし、少しでもエリンの重荷を軽くしてあげられたらって思う。
ごめん・・・!」


「レッド・・・わかってるわ。
レッドは女性にあれこれ気を遣えるほど、器用じゃないことくらい。

今だって私が好きでもない人と結婚させられるんじゃないかって心配してくれてるんでしょう?
それだけで十分だから。

会社は私が親から継いだものだし、これは私の問題なの。
レッドが会社をやめるって決心するのと同じようものだもの。」


「そりゃ、違う。
俺が仕事をやめようが、どこに就職しようが俺の勝手だ。
しかし、君はご両親が残した社員ひとりひとりの生活がかかった会社をその細い肩に背負っているんだ。

俺にはそればかりはどうもできやしないけど、せめてエリンがバリバリ仕事をこなせるようにだけはできると思ってな・・・。」


「家族みんなに言ってるんでしょう。うふふ。」