翌日の朝も、レッドが起きた頃にはエリンはいなかった。

そして、リビングのソファで寝ていたラングリオもいなくなっていた。


レッドが出社すると、経理部がにぎわっていた。


「どうしたんだ、この騒ぎは?」


「リガオン常務の命令で帳簿を見直すんだと。
午後からリガオンの声のかかった会計士たちがやってくるらしい。」


レッドはエリンがリガオンに圧力をかけたに違いないと思った。


(それで不正とか横領が見つかればしめたもんだよな。
でも、待てよ。もしこれで損失の解明ができてしまったら・・・エリンはリガオンと・・・。)


レッドはそれでも自分にはどうすることもできないとわりきって、午前中は営業にまわっていた。


昼食を外ですませて会社にもどってみると、経理部に知らない顔が3名ほど座ってバリバリと仕事をこなしていた。


(へぇ・・・こいつらがリガオンが連れてきたチェック係か。あれ?あの女の子は・・・?)


「あの・・・君!少しだけいいかな。」


「はい、何でしょうか?」

レッドが声をかけた女性がパチンとウィンクをした。


「うわっ・・・え・・・エリ・・・」


「シーーーッ!それ以上は言わないで。
こうでもしないと、損失の原因がわからないんだもん。」



「でも、どうして君が・・・直々にこんなとこで帳簿さわってるんだよ。」


「リガオンに頼んで、自分で不正を見つけようと思って。」


「いったいリガオンとどういう付き合いなんだ?」


「まぁ、そこはまた家で説明するから・・・私は仕事するわね。
あ、そうそう、ここでは私、エリーナ・クォンって名乗ってるから、エリーナって呼んでね。」


「いつまでここに?」


「早く見つかればそこで終了だけど、なかなか見つからない時はとりあえず1週間かな。
精鋭連れてきてるし、大丈夫だと思うわ。
じゃ、またね。」



レッドが営業部の部屋にもどると、オスカーが早速ニヤニヤして待っていた。


「レッド、君もスミに置けないね。
常務の連れてきた経理のお姉さんを口説いてるなんてさ。」


「オスカー・・・べつに俺は口説いてないぞ。
どうしてそういう話になってるんだ?」


「そんな隠さなくてもいいじゃないか。
もう、デレデレでうれしそうな顔してたクセに。
それより、レッドの好きなタイプがああいうかわいいインテリっぽい娘だとは知らなかったなぁ。

俺はてっきり清楚なお嬢様タイプが好きなのかと思ってたけどなぁ。」