「壱星」
何だかそこらじゅうに歯が浮きまくっているので、ちゃっちゃと進めよう。
この浮ついた雰囲気だけで終わっちゃったら勿体ない。
せっかくみんなが俺の我儘を聞いてくれたのに。
「お前、言ったろ。そんな不安、さっさと形作ってみて消して行け。
理波ちゃんと結婚する気があるって言うなら、今からその覚悟で行けよ。じゃねえと大事な姉ちゃんやらねえぞ」
壱星の不安は、まだそれが始まっていないからだ。
その前の段階で、自分の先を歩いた影だけが見えている。
自分がいつかその影を追うかもしれないことが目の前にあるから怖いんだ。



