「ねえ、君大学部に来なかった?」
盆にグラスを載せて机を回っていると、声をかけられた。
「大学部の……先輩ですか?」
俺は足を止め、女性二人組に向き直る。
「そうよ。見たことがあるんだけど……」
下手なナンパみたいだな。
でも、事実俺は大学部に行っているからそういうカテゴリーな話ではない。
「行っていますよ。滝篠教授の小間使いをしているので」
「やっぱり! 滝篠教授のとこかー。がんばってね」
「ありがとうございます」
一礼して、裏に戻る。
……がんばってそれっぽくしてみたんだけど……ちゃんと対応出来てるか、五組の生徒に訊いておこう。



