俺のなりたかった《俺》は、いついなくなったんだろう。 それとも最初からいなかったのか……。 「なあ、ふー。その……家が危なくなる前……理波ちゃんが生まれた頃は普通だったのか?」 「へ? 何でそんなこと?」 「いや、そうなら戻れる可能性もあるんじゃないか? ふーも理波ちゃんもすっごいいい名前もらってるじゃないか」 「あ、あー。そういう解釈か。違うんだよ、刹那。あの人たちは、ずっとああだった。 理波ちゃんの名前も、俺の名前も、理波ちゃんを育ててくれたのも、祖母なんだ」 「え――」