だから、父親にとって『妻』ってのは、社会的に必要なものなんだ。
離婚なんてしたら風体ないから、離婚しないだけ。
母親も、出産を終えて体調が戻ったら俺のことはほっぽって仕事してたんだって。
理波ちゃんはあんなナリだけど、俺より四つ年上だから……理波ちゃんが俺を育ててくれたんだ。
理波ちゃんがいなかったら、俺もういなかったと思う。……姉よりも、母親みたいだった」
「………」
刹那は何か言いたげだったけど言葉が見つからないのか、何度か口を開きかけては閉ざした。
壱星は口を引き結んで聞いている。
メニュー