おばあさんは小さな桶を片手に抱えて口元に手を当てる。
さすがこのでかい家屋に似合う上品なおばあさんだ。
動作も綺麗。
「何だったらお輿入れしてもらってもいいのよ?」
「ありがええええっ⁉ 何言っってんすか⁉」
初対面の人に全力でツッコんでしまった。
おばあさんは「ほほほ」と笑っている。
「雅風、静かに……ああ、トキさん」
「氷お持ちしましたよ。旦那様には連絡します?」
「いえ、治り次第俺が送り届けるから大丈夫。……トキさん、こいつを変なネタでからかわないでくださいよ?」
「あら、変なネタって何かしら?」
そ知らぬふりをして、トキさんというおばあさんは部屋に入って行った。
な、何だこの圧倒的敗北感は……。



