壱星がドンびいた目をしている。
いいだろが、刹那はこういう奴なんだから。
「ま、落ち着けよふー。ひとまず深呼吸でもすっか」
刹那に促されて、俺は深く呼吸した。
頭に血しか昇っていなかったのが、酸素が行き渡る。
はー。……うん。
「理波ちゃん、ほんとなの?」
さっきから固まってしまった理波ちゃんに問いかける。
壱星からは決定的な一言が出たけど(俺が遮ったけど)、理波ちゃんは何も言っていない。
昨日、彼氏がいるとは聞いて、同じ学部ではない――確かに壱星は高等部だからそれではないのだ――と聞いただけだ。
理波ちゃんは顔を真っ赤にさせて視線を彷徨わせてから壱星を見上げた。
その唇が、薄く開――



