「へ? 何、理想化?」
「いや、少しお前とは違うんだが……心理学の見方の一つにあるんだ。基本的不安、というものからなるやつだ」
「……調べる」
「そうだな」
ほら、と、滝篠が、俺が入る教室の扉を開けてくれた。
「お前さりげなくいい奴だよなー」
「は?」
ものすごく変なものを見る顔をされた。
対人対応が苦手でも、こういうさりげない気遣いが滝篠にはある。
図書室でもそうだった。
だから、ハブられたりしないんだろうなって思う。
「ありがとな。じゃな」
礼を言うと、滝篠は踵を返した。
あ。
「滝篠――壱星!」



