目線をすぐに前に向ける。
え、ちょっと待って、
動揺で血液の流れが一気に早くなる。その音が大きく頭に響いて、自分が何を考えているのかもわからなくなって混乱する。
....蒼真に、そっくりだったのだ。
陽翔はずっと前を向いていて後ろ振り向かないから気づいてない。わたしの見間違い?幻想?
だって転校したし....考えすぎてそう見えただけ?それとも似てるだけの別人?
もう1度見たいけどどうしてか怖くて、まだ確信なんてないのに長く伸びた髪の毛で顔を隠した。
そんなわたしのことなんて知りもせずに、教室内から隣の彼に向かった言葉が発せられた。
「いきなり遅刻ギリギリかよ、そうま!」
今、"そうま"って.....言った。
「うるせー、間に合ったしいいんだよ。てか弘樹クラス一緒だったのか」
「知らなかったのかよ!」
「そりゃまあ、急いでたからな」
隣の人の席の前は陽翔で"か行"、蒼真は"さ行"だ。だからもう、そうなんだろうなって予想がつく。まさかここまできて別人だなんて確率は本当に低いだろう。
でも、やっぱり信じられない自分がいて。
....もう頭のなかぐちゃぐちゃ。
ただ髪の毛を横に垂らして俯いた。すると不意に、右側のそれが隣の人の手によって持ち上げられた。

