オレンジの片想い


蒼真に続いて教室に踏み込んで、真っ先にもうひとつ残っていた問題に直面した。



...陽翔。



彼の席はわたしの右側の列の2つ後ろ。近いとも遠いとも言い難い微妙な位置だけど、話しにくいから今の席になってあまり話したことはない。いや、その前からわたしたちの距離感はすこしおかしかったのだけど。


その席で、陽翔は鞄に顎を乗せて、退屈そうにスマホをいじっていた。



席につくには、陽翔の隣を通ることが必須だ。他の道が、よりによって男子に遮られてしまっているからだ。こんなときに限って。


や、逃げてちゃ駄目なんだってば。


今勇気出さないで不自然に通り越してしまったら、後からもっと話しかけづらくなる。

陽翔の背中を見て、昨日のことを思い出す。そこで、はっとした。



ちゃんと思い直して見れば、わたしなんかよりも陽翔のほうが、何倍も緊張してるに違いないのに。

想いを伝える怖さも、緊張も、そのあとの不安だって、わたしには解るはずなのに。




...わたしは本当に、自分のことしか見えてないな。



ごめん、陽翔。




すう、と大きく息を吸い込んで、彼の方に向かって足を動かした。




「...、おはよう陽翔」