オレンジの片想い


蒼真からありがとうと礼を述べられるのは、初めてなんかじゃない。今までに相談に乗るたびに言われてきたから、言われ慣れたような言葉だった。ちょっと照れながら言うその顔が、いつしか見慣れてしまう程。なのに、


今言われた"ありがとう"が、全てに対してのものに感じられて、すごく、すごく嬉しい。


ふたりの恋が叶ったからこそ、今までわたしがしてきたことは全部今に繋がることで、間違ってなんていなかったって、そう思うのだ。




...わたしの方こそ、ありがとう、だ。


誰かの幸せを願う幸せを、あなたがわたしに教えてくれたのだから。




「...蒼真」


「ん?」


「おめでとう」


「....ありがとう」



今度は心からちゃんと言えた気がした。

蒼真はまだ、わたしに気を遣ったような表情だけれど、それでもいい。きっと、伝わったはずだから。



先に教室に足を踏み入れた、"すきだったひと"の背中をまっすぐに見つめた。その背中は、なんだか昨日よりもたくましく広く思えて、1日で人はこんなにも変わるものなのかと感嘆した。


大切な人が、もっと大切になったからかな。




...わたしがあなたを好きだったように、あなたはあなたの好きな人を、精いっぱい愛してあげてね。




なんて、口では恥ずかしくて言えないことを、心の中で彼に言った。