オレンジの片想い


蒼真は、ともだちだ。

そう自分に言った。そうだと思い込ませるほど言った。ずっと心のなかで、そう唱えていた。



わたしが蒼真の手を借りなかったことに本人は少々驚いているようで、だけどすぐにわたしの気持ちを汲み取ったのだろう、ふっと笑って、差し出した手でそのままドアを開けた。


教室に入るなり、くあ、と大きな欠伸をした蒼真。


そんな彼に向かって、なぜか嫌みのような口調になって、彼がいちばん弱いひとの名前を出してみた。



「...今日、小夏ちゃんと一緒に学校来たんだけど」



"小夏ちゃん"

そのワードに敏感に反応して、眠そうだった顔はどこへやら、瞬時にこちらを向いた。



「......反応いいね」


「うるさいな」


「わたし、小夏ちゃん曰くふたりの恋のキューピッドらしいよ」



今朝言われたことをそのまんま伝えると、蒼真はわたしと同じく一瞬目を丸くして、それから笑いだした。それもそうか。わたしだって自分で笑ってしまったくらいだ。

わたしキューピッドなんて柄じゃないもんね。


ひとしきり笑った蒼真が、まだ半笑いの状態で口を開いた。



「はあ、腹痛ぇ。お前がキューピッドって...想像したらやばいな。おもしろすぎて」


「お黙りなさい」


「でもまあそうだよな。雪葉には色々助けてもらってたのは本当だしさ。感謝してます、キューピッドさん」