驚きのあまり、変な声を上げて後ずさりして、背後にあった壁のでっぱりに思いっきり衝突してしまった。
「...ったあ...」
後頭部がずきずきと痛んで、それで力も抜けてその場にしゃがみ込んだ。そのおかげでさっきまでぐるぐる考えていたことが吹っ飛んだけれど。
わたしに声をかけたその人は、呆れたような表情でわたしを見下ろした。
「ほんと何やってんだ、お前」
「そ、蒼真がびっくりさせるから...」
声をかけてきたのは、蒼真だった。
朝から会いたくないって思ってる人にばかり会っている気がするなあ...。
でもこんな会い方の方が、変に緊張しないで済んだかも。だって今、不自然じゃないから。ぎこちなく話しかけるよりはずっといい。
蒼真が、普通に接してくれているおかげもあると思うけどさ。
「さっきの奇声はおもしろかった」
「忘れろ、今すぐ忘れろ」
「無理」
「無理じゃない」
「はは、あほ」
そういつものように笑って、手を差し出す蒼真。
...そういうさりげない優しさが、駄目なんだよ。これ以上は、好きにならないんだから。だからわたしも、いちいちキュンとかしてちゃ駄目だ。これが蒼真の普通なんだもん。
わたしは差し出された蒼真の手をぱしっと叩いて、自分で立ち上がった。

