「...やっぱり、って」
「うん。気づいてたよ。そりゃあ、あんなに見つめてたらなあ」
う...それはちょっと言わないでいただきたかった。恥ずかしい。でも目で追っちゃうんだからどうしようもないじゃないか。
心の中でぶつぶつと呟いていると、また彼は躊躇いがちに話し出す。
「...雪葉、あいつ、」
そこでもう、陽翔が何を言いたいのかわかった。その先を言ってほしくなくて、重ねるように大きな声で言った。
「っ、知ってるよ。小夏ちゃんのこと、でしょ」
その無言が、肯定を表していると思った。
「わかってても、どうしようもないの。わたしが勝手に...好きなだけだから。だから大丈夫。いいの」
捲し立てるように、いつも心の中にあることをそのまま、口にした。
「.....、」
「え、」
陽翔は、まだこちらを見ずに何かを小さな声で呟いた。わたしが言葉をこぼすと、彼は自転車に乗ってから初めて、一瞬だけだけどこちらを見た。
「...いや、なんでもねぇよ」
陽翔はそう言って誤魔化した。だけど、本当は聞こえていた。その内容に驚いて、言葉をこぼしてしまっただけだった。
彼は、言ったのだ。確かに
『俺だって』
と。そう言った。なんでもないと言った彼の顔は、なんでもないようには到底見えなかったから、きっとわたしの聞き間違いなんかでもない。
_____ねえ陽翔。もしかして。
そんな疑問が残ったまま、夏休みに突入した。

