オレンジの片想い


その日の放課後、まだ支度の終わっていなかったわたしのもとへ陽翔が来た。


準備が整って、向かったのは駐輪場。昨日の帰りに言った通りに、彼の家の近くにある喫茶店で勉強をするためだ。

陽翔はキーを差し込んでサドルに跨がると、当然のようにわたしが昨日乗った場所をぽんぽんと叩き、乗ることを示した。



最初は渋ったものの、また流されて後ろに乗る。昨日よりは、安定していた。


自転車が動き出して加速していくと、やっぱり風が気持ちよかった。でもまだ怖いから、陽翔の背中に凭れて、ジャケットの裾をそっと掴んだ。抱きつくよりは、まだ恥ずかしくない。



「昨日より慣れたな!」


「うん、なかなか楽しいね」



歯並びの良い歯を見せて彼は笑って、また前を向いた。



どんどん抜かしていく小学生の列。



「良い子はマネしちゃダメだよー」


「ぶはっ、俺ら悪い例だな」


「だから注意喚起してるんだよ。わたしたちのようなことはしちゃダメですよ~」


「誰も聞いてねぇけどな」



陽翔の家とわたしの家は少し離れているから、この辺りのことはよく知らない。

変わっていく景色を楽しんでいると、速度が遅くなっていき、止まった。どうやら着いたらしい。



小さな喫茶店で、わたしたちは勉強した。あまり長居はできないと思っていたら、陽翔は常連客らしく、なにも言われなかった。

帰り、昨日と同じくらいの暗さで、あまり距離もないからひとりでいいと断ったが、陽翔は送ると言って聞かなかった。


その言葉に甘えて、また彼の後ろに乗って送ってもらった。