オレンジの片想い


なんらいつもと変わらない、馬鹿みたいな話の中で、きっと彼はわざと避けているであろう話題に触れてみた。



「....で。昨日のこと、話さないなんてことないよね」




にやにやしながら、仕返しだと言わんばかりに彼の顔を見た。

思った通り、"げっ"っていう顔をする蒼真。


それに、勝ち誇ったような笑みを浮かべると、彼の顔はさらに悪化していった。



「い、わなくても、そのまんまだよ」



そのまんま、か。まあたしかに。ふたりで勉強していたことはわかってる。ただそこに辿り着くまでの過程が知りたいんだよ、わたしは。

ただ、わたしが彼にとって小夏ちゃんとは別の"特別"でありたいから。


それがどんなかたちでも、わたしはそれを望んでる。



「....ふたりで勉強するってことは知ってたの、本当は。小夏ちゃんに聞いたから」


「はっ?お前また、何仲良くなってんだよ」


「ああ、心配しないでよ。わたし口は堅いから。それに偶然聞いちゃっただけだし。ただ、蒼真から誘ったのかなあって」



目でうざいと言われているのが伝わってくる。


だけどやめない。嫌そうな顔して、頬がほんのり赤く染まるのを見て、勝手に針を胸に刺しても。



「.....そりゃ、俺から言ったけど」


「ほお。頑張ったじゃん」


「.......うん」



なんとも言えない表情をした、恋する好きな人の肩が、ちょっと可愛く見えるのが皮肉なものだ。