顔があげられなくて、数式をずっと見ていた。否、見ていたのかも、もはやわからないけれど。
「.....」
なんで、どうして、素直に"うん"って言えないんだ。今まで見てきた恋をしている女の子たちは、可愛くその人の事を好きだと言っていたのに、どうしてわたしは同じになってないんだ。
ただ、黙り込むことしか出来ないでいると、陽翔は優しい声色で、わたしの名前を呼んだ。
「....雪葉」
こっちを見て、と言われたような気がして、漸く顔を上げる。わたしの表情を見て、陽翔は困ったように顔を歪めた。そんな顔をさせてしまう程、今のわたしはひどい顔面なんだろうか。自分ではどうも、麻痺したみたいでわからない。
「....ごめん。でもあのふたり見て、泣きそうに、してたから」
陽翔が、謝ることなんて1つもないのに。
彼の瞳にわたしは、泣きそうに映っていたのか。自分では全くそんなつもりはなかったから、わたしのことなのにびっくりする。
そうか。じゃあもっと、強くならなきゃ。
「.....蒼真に好きな人がいるのは知ってる。陽翔もすぐに気づいたんでしょ」
陽翔と目が合う。その隅に映る、楽しそうな彼ら。
それを見ながらも、頬の筋肉に指令を送る。
「だからね、大丈夫。これくらい覚悟の上だよ。叶わないかもしれない事、わかってて....勝手に好きでいるだけだから」
泣きたければ、辛ければ、泣けばいい。なんてさ、そんなこと言われたら、きっと止まらなくなってしまう。ただでさえ可能性の低い恋なのに、こんな些細なことで泣いていたら、きりがない。
だから、わたしは泣かない。
これから先辛いことがあっても、好きって気持ちは簡単に無くなることはないでしょう。その時耐えられるように、強くなるんだよ。

