少年陰陽師 奥州平泉奇譚

僕は、平泉には義経や弁慶や徒労(とろう)の無念が滞っているように思った。




逃れる術を失い、館に火を放ち、命を断った義経。


仁王立ちで雨矢を浴び果てた弁慶が、切なくて哀れでならなかった。






「戦争は、人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」




昭和20年11月に制定されたユネスコ憲章の前文を思い出した。




奥州藤原氏、約100年に渡る栄華は源頼朝の侵攻で幕を下ろした。





「夏草や 兵どもが 夢の跡」




その後500年を経て、平泉を訪れた俳聖、松尾芭蕉の句。




悲運の勇将、源義経を偲んで詠んだ句が、金色堂の美しさと対比され胸に迫る。




僕は、ずっと黙って見学していた八雲から



「おい祐! 泣いてるのか」



と声をかけられたけれど、涙が溢れて答えられなかった。