少年陰陽師 奥州平泉奇譚

僕は、静御前の詠んだ歌を諳じる。


たぶんこの時、僕は人の気配をしていなかったのかもしれない。


驚きとも怯えともつかない表情で、静香先生は僕をみつめる。



「あなたの気……本当に人なの?」

尋ねて、僕の左手のサポーターをみつめた。

そして僕の返事を待たずに、桜の木をみつめて話を続けた。


「あの木、桜の木に薔薇の木が絡まってるの。薔薇は毎年、みごとに花を咲かせるけれど桜の木は咲かない。
樹齢、数百年の桜の木。あの木はね、1度も花を咲かせていないそうよ」


悲しげに呟くように。