あの後、ひとりで考え込んでいると、気がつけば桐島さんが家に来る時間になっていた。
ないも同然な知能で悠斗のことを考えて、中学の時を思い出して。
そんなことをしていると時間が過ぎるのはあっという間だった。
考えたってわからないものはわからないけど、考えずにはいられなかった。
「……おまえ、なんかあった?」
「え?」
あっという間に迎えた、カテキョの時間。
あたしの目の前、頬杖をついて言う桐島さん。
勉強開始早々に、桐島さんにそう聞かれた。
なんで『なにかあった』って気付かれたんだろうなあ。
「え? じゃなくて。さっきから手止まってるし、上の空でしょ」
そう言った桐島さんが指をさすところは、あたしの手元のノート。
今日はたしか数学のおさらいをするって言って、それをノートに解いているところだったはず。
……なんだけど、目線を下に移せば、そのノートには問題の方程式がたった一行書かれただけで、あとは白紙だった。
かろうじて手にシャーペンは握っていたけど、芯は折れていて出てなかった。