天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

 ―― ~~♪
 ついにスマホが鳴って、私の心臓も同じように飛び跳ねるように高鳴った。……晃さんだ!

「も、もしもし?」
『聡美さん? 俺。足の調子はどう? 無理してない?』
「はい。だいじょうぶです」
『良かった。ちゃんと治ったらふたりで会おう』
「……はい」

 それから、とりとめのない会話が続いた。
 内容は宝石のことや展示会のこと。それにちょっとした世間話ばかり。
 でも私は自分でも変だと思うくらい、楽しくて楽しくてしかたなかった。
 話の内容なんかどうでもよかった。ただ晃さんと話していることが、嬉しくて楽しくて堪らなかった。

『それじゃ、また。長電話しちゃってごめん』
「いえ、こちらこそすみませんでした」
『お大事にね。また電話してもいいかな?』
「もちろんです。じゃあ、おやすみなさい」
『おやすみ。聡美さん』

 電話を終えて、大きく息を吐き、そのままベッドに倒れ込んだ。
 枕を抱きかかえてギュッと顔をうずめ、興奮した心を鎮めようと努力した。
 戸惑いと不安は、ある。どうしてもそれは消え去ってはくれない。
 だけど喜びがそれを遥かに上回ってる。ドキドキが私を振り回すようかのように支配している。

 生まれて初めてお姉ちゃん目当てじゃなく、私自身に興味を示す男性が現れたんだ……。
 怪我、早く治れ。一日でも、一分一秒でも早く治れ!

 湿布をまるで包帯のように患部に貼りつけながら、私は仏壇に線香をあげて、懸命に両手をこすり合わせてご先祖様に祈った。