それでも一応病院に行く事になり、あたしは栄子主任と晃さんに付き添われて最寄りの整形外科へ。

 展示会の最中だから申し訳なくて、病院なんて大袈裟だって辞退したけど栄子主任に跳ねのけられてしまった。


「私が責任もって付き添いますから、主任はどうぞ仕事に戻ってください」

「近藤君だけに任せるわけにいかないわよ。あたしは聡美ちゃんの直属の上司なんだから」


 病院の待合室で、晃さんと栄子主任の会話を聞いてますます申し訳なく思う。

 名前を呼ばれ、レントゲンを撮り、立派な『軽い捻挫』のお墨付きを先生からいただいて、ホッとした。


「聡美ちゃん、このまま帰って休んでもいいのよ?」

「いえ大丈夫です。仕事に戻ります」


 一瞬、逆に迷惑かけるかな? とは思ったけど、このまま帰ったら明日も休まされそうな気がする。

 座ったままでも出来る内容の仕事もたくさんあったし、そっちの方で頑張らせてもらおう。


「ここで待っててね。あたし車を回してくるから」

 あたしと晃さんを玄関前に残し、栄子主任がすぐそばの駐車場へと駆けていく。

 晃さんが心配そうに話しかけてきた。


「聡美さん、無理しない方がいいよ? 帰って休んだら?」

「大丈夫ですよ。本当にたいしたことないですから」

「薬、ちゃんと飲むんだよ?」

「はい。分かりました」

「俺はこの後仕事があるから戻るけど、ちゃんと大事にして」


 栄子主任の車がゆっくりとこちらへ向かって進んでくる。

 と、晃さんがあたしの耳元に口を寄せ、そっと囁いた。

「今夜電話するから……待ってて」