でも詩織ちゃんの気づかいは素直に嬉しい。
 自己アピールがすごくウザい以外は、じつは普通にいい子なんだよなぁ。詩織ちゃんて。
 強すぎる自己主張の陰に隠れて見えにくいけど、そういう意味では彼女って損な性格かも。

 そんなことを考えている間に、詩織ちゃんが栄子主任を引き連れて戻って来た。
 そして栄子主任が私を見るなり血相変えて叫ぶ。

「聡美ちゃん大丈夫なの!? 複雑骨折したんだって!?」
「してないです!」

 誰!? 誰が骨折!? 
 なんか、伝言ゲームみたいに情報の伝達が歪められてるんですけど!?

「でも怪我したって聞いたわよ!? 大怪我だって!」
「聡美ちゃん、歩けないほど大怪我なんでしょ!? だったら骨折してるよきっとー!」
「いやだから、誰も骨折してないってば!」
「聡美さん、湿布もらってきたよ。……って、なんだかずいぶん騒がしいな」

 ちょうど騒ぎの最中に、晃さんが湿布片手に戻って来てキョロキョロしている。

「あら近藤君! 複雑骨折に湿布貼ったってダメよ!」
「え!? 聡美さん、複雑骨折だったの!?」
「だから骨折じゃありませんってー!」

 ただの軽い捻挫だからと懸命に説明して、やっと周囲に納得してもらった。
 みんなの安心した顔を見て、こっちも安心すると同時に、なんだかちょっぴり嬉しくもなった。
 私のこと、こんなに心配してくれたんだな。
 迷惑かけてごめんなさい。そして、皆さんありがとうございます。