「ただ、ルビーの色の定義って厳密に決められてるわけじゃないからね。どこまでがピンクサファイア色で、どこからがルビー色として認められるかと言われると、すごく微妙なところなんだよ」
「自分の目で見てみるのが一番なのかなぁ」
「うん。宝石を購入する上で、自分の目で見て自分の意思で決めるというのはとても重要だね」

 それにしても知らなかったな。サファイアとルビーって同じ宝石だったのか。
 色の違いだけで、その色にもたくさんの種類があるけど、結局同じ石に変わりない。

 ピンク色のサファイアとルビーの違いなんて、あって無きがごとし。
 物によっては『レッドサファイア』なんて商品もあるらしい。
 赤サファイアって、なにそれ? 赤じゃないからサファイアなのに、もうわけわかんない。
 石は人間を笑っているかもね。赤だの青だのピンクだのと大騒ぎして、よくやるよって。
 なんの違いがあるんだよって。

「違いなんてさ、そんなもんだよ。聡美さん」

 晃さんの声の雰囲気が少し変わった。
 穏やかに労わるような、明るく元気づけてくれるような、そんな温もりの籠った声だった。
 そしてあたしを見る彼の目はいつも通りに爽やかで、いつも通りに優しい。

 なんで……。
 なんでこの人って、わかってしまうのかな?
 私の鉄仮面の下に隠されている本音を。