天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~

「こんなにたくさんの種類の宝石が展示されるなんて知りませんでした」
「手ごろなアクセサリーからハイクラスジュエリーまで、幅広い内容だね。今日一日で結構な売上金額になると思う。お金って、あるところにはあるんだよなあ」
「よく言いますよね。水は上から下へ流れるけど、お金の流れはその逆だって」
「……真理だ」

 軽く笑って会場の様子を眺めると、詩織ちゃんが極上の笑顔でお客様に対応している。
 すごく大変そうだけど、それ以上にすごく幸せそう。

「詩織さん、大活躍だね。忙しそうだな」
「本人は嫌だ嫌だってずっと言ってましたけど」
「そう? 彼女、こういうのすごく好きそうだよね? だから喜んでいるでしょ」

 晃さんは顎に手を当てながら、プリンセス姿の詩織ちゃんを淡々と観察している。
 やっぱりこの人、鋭い。
 男の人って詩織ちゃんを、少女のように純真で天真爛漫な子、みたいに見る人が多いのに。
 さすがは晃さん。見るトコ見てるなぁ。

「彼女はとても自分に自信をもっているタイプだから。ああいうの、かなり好きだと思う」
「アピール力が強いなら、詩織ちゃんってこの仕事に適正ありそうですね」
「うーん、それはどうだろう。販売員向きかどうかと問われると判断に困るね」
「え? だってアピール力があるんですよね?」
「店員は商品をアピールするものだろ? 自分をアピールされてもお客は困るよ。まぁ、自分自身に対する自信と同じくらい、自信をもって商品を勧められたらそれは武器だと思うけどね」