オフホワイトの、柔らかくふんわりと広がったシフォン素材のプリンセス・ドレスはとても可憐に見える。
 高さのあるプラチナのティアラが、彼女の頭上でまばゆく光っていた。
 そして、目玉商品の宝石の美しいこと!
 胸元で光るサファイアが、うっとりするほど鮮やかな青い光を放っている。
 鮮烈で、濃く透き通るロイヤルブルーの色はまさに女性の皆が憧れる、これぞ『サファイア』だ。
 詩織ちゃんの右手の指にはめられたルビーの指輪も素晴らしい。
 目が釘付けになるほど明瞭な濃い赤で、しかも濁りが無い。堂々とした風格が感じられる。

 それら一式勢揃いで身につけた詩織ちゃんの表情はもう、至福そのもの。
 記念撮影を次々とお願いされ、笑顔で応じる姿はまるで芸能人みたい。
 なんかもう、今にも「みんな! 今日は私のために集まってくれてありがとう!」とか言い出しそうでハラハラした。
 
 詩織ちゃんは実に生き生きとしてなんの心配もなさそうなので、そのままのご活躍を祈りながら私はその場を離れた。
 外の空気を吸いたくてテラスへ出ると、ウッドデッキの向こう側に英国風の庭園が広がっている。
 緑豊かな景観に心が癒される気がして、庭を散歩してみたくなった。
 そして足を一歩踏み出した途端、ガクッと体のバランスが崩れる。
 デッキと庭の段差部分に気づかず踏み外してしまい、ドサッと横座り状態で地面に転んでしまった。
「い……痛ぁい……」