休憩時間になって控え室に引っ込んだときにはもう、同情視線にさらされ続けた精神状態は疲労困憊。
　どうせ私なんてっていう、最低のコンプレックスに支配されてしまっていた。
　それがわかっていながら自分でもどうしようもできない。そんな感じだ。

　しかもタイミング悪く、スマホが振動して着信を知らせた。
　イライラしながらディスプレイを確認すると、晃さんからの電話だった。
　じつはあの食事の日から、彼は何度か私に電話をくれていた。
　そのたびに私の気持ちはボールのように軽やかに弾んでいたのに、今、彼からの電話を見て逆に気持ちが沈んでる。
　まるで空気の抜けたバスケットボールみたいに、心が重くてたまらない。

「……はい」
『聡美さん？　晃です。今お昼休みだよね？　電話して大丈夫？』
「はい。大丈夫です」

　無視するわけにもいかずにいつも通りを装って電話に出たけれど、どうにも張りのない声しか出ない。
　そして鋭い晃さんがそれに気付かないわけがない。

『なんだか元気がないみたいだけど具合でも悪いの？』
「いえ、そんなことないですよ。だいじょうぶです」
『そう？　じゃあ食事に誘っても平気かな？』
「……え？」
『この前の店から新メニュー開始のお知らせが届いたんだ。良かったら今度一緒に行かない？』

　晃さん、またあたしの事を誘ってくれるの？
　どうして？　なんで私なんかを誘ってくれるの？